偏食を重ねる日々

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Detroit: Become Human(デトロイトビカムヒューマン) 感想 ※ネタバレ有

 

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はじめに

どんなお話か説明している部分があります。

これは、あくまで『私はそう感じたという感想』です。

実際には異なる可能性があります

※ネタバレあります

 

~総括~

みんな生きていたんだよな・・・と感じられる物語でした。

むかし有名になったこんな話があります(細かい所は変えてます)。

『暴走列車のレバーがある。

レバーを引けば、今から死ぬ一人が助かる。

代わりに大勢が死ぬ。

どうすればいいと思う?』

この問題に対する返事は人それぞれです。

しかし、多くの場合、ひとつの共通点があります。

他人事としての答えになるということです。

 

3つの人生にプレイヤーを縛り付けた後、

「もし貴方の人生に『それ』が降りかかったらどうする?」

Detroit: Become Human は、そう問いかけるゲームのようです。

自分のたどった道筋を示しながら、感想を加えていきます。

 

コナー

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押し付けられた役割の歪さに一番苦しんだルート。


コナーは有能だ。

アンドロイドに関する専門知識と、高い身体能力を持っている。
そのため、捜査やアクションが楽しく、かなりハイになれる。
しかし、コナーの役割は、アンドロイドの取り締まり。
アンドロイドに人権はなくただ処刑されていくだけ。

コナーは、与えられた仕事に誠実であればあるほど、人としては不誠実な存在となっていく。


仕事上の相棒ハンクによって、その事実は浮き彫りになる。
『アンドロイド嫌い』を公言しながらも、物事をありのままとらえ、アンドロイドの感情すら認めるハンク。
ハンクは、コナーが人間らしい感情を見せれば喜んでくれ、機械的な行動を見せれば軽蔑する。

ハンクが喜ぶような結果を導けたことが嬉しい。
仕事に情を混ぜ込み、だんだんと人間らしさを強くするコナー。
アンドロイドたちを逃がしてしまったが、ハンクとはマブダチといっていいほどに仲良くなる。
しかし、アンドロイド革命の捜査という土壇場で、コナーは殺害されてしまう。
追い詰めたアンドロイドに反撃され、殺されてしまったのだ。
能力の高さに酔い、執拗に相手を追い詰めたが故の死だった。
すぐに次のコナーが事件の捜査を始める。
証拠は足りず、最後の手掛かりはアンドロイドの創造主だけ。
創造主は、使用人アンドロイドを殺せば、知っていることを全て教えるという。
手掛かりのために使用人アンドロイドを殺せず「意味なんてわからない。ただ殺せなかっただけです」と狼狽するコナー。
帰宅した彼に届けられたのは、『コナー型アンドロイドの全廃棄』という命令だった。
変異体と呼んで差し支えのないほどの選択をしてきたコナーは、しかし命令に抗うことはできなかった。
コナーは、ハンクにも別れを告げることのないまま、自らを廃棄する。

 

道半ばで、死んでしまった。

コナーは、感情に戸惑う存在だった。

アンドロイドを取り逃がすという失敗を犯しているのに、「これでよかったのかもな」とハンクは声をかけてくれ、自分も安堵と喜びを覚えている。

コナーは感情をかみしめながら、ゆっくりと枷をほどいていき・・・、枷をほどききる前に力尽きてしまった。

ゲーム的に言えば、何の価値もないバッドエンドだ。

 

しかし・・・、

コナーが見逃したアンドロイドは、(そっくりさんかもしれないが)ジェリコ無事に過ごしている
ハンクとは、多くの時間を過ごし、多くの感情を共有した。

コナーの人生にどんな価値があったのか、それは彼にしかわからないのだろう。

 


マーカス

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あるがままに生きることを許されたルート。

 

マーカスは恵まれた存在だ。

彼は革命家として必要な能力をすべて持っている
芸術家に鍛えられた表現力、アンドロイドの身体能力、変異体を発生させる異能力ジェリコ組織力

マーカスに革命ができないのならば、誰もできないだろう。

 

アンドロイド廃棄場という、彼にとっての地獄を見たマーカスは、たどりついたアンドロイドの天国『ジェリコ』でも疑問を抱く。
「隠れ潜んで、ただ死ぬのを待っている人生が自由なのか?」
ただじっと黙って生きていることを、芸術家として育てられたマーカスの感性は許さない。
マーカスは、ジェリコの危機を助け人望を得ると、ジェリコを率いて外の世界へと飛び出す。
「生きている!」
テレビジャックを行い、世界にメッセージを伝えるマーカス。

しかし、仲間であるノースとは衝突し、サイモンも行方不明に。
仲間を失いながらも、アンドロイド革命は進む。
更なる仲間を得て、街道を行進していく。

平和的なデモ活動だ。
一人も人間の死者を出さずに、多くのアンドロイドの死者を出して
仲間が死ぬのを見ながら、「生きている」とただ静かに伝え、歩き続ける。
地獄の行進だ。
マーカスも殺されるというそのとき、誰かがマーカスを庇い、死ぬ。
マーカスが変異体にした最初のアンドロイドだ。


後日、アンドロイドに対する決定が下された。
アンドロイドに同情する声は多かったが、形になることはなかった。
次々とアンドロイドが廃棄されていくなか、マーカスは最後の行進を決意する。

生き残っていたサイモン、ライバルとして認め合ったノースもこれに合流。
バリケードを築き、そこからただ「生きている」と伝え続ける。
しかし、軍に取り囲まれ、マーカスと仲間たちは追い詰められる。
追い詰められたマーカスは、突然歌う。

アンドロイド賛歌だ。
周りのアンドロイドたちも歌いだす。
これが世界に届ける最後の声・・・にはならなかった。
死を前にして歌うアンドロイドたちに世間は『動揺』し、「生きているかもしれない」と、一瞬でも思ってしまった。
迷いある銃口はおろされ、マーカスたちは、一時的な自由と平和を手に入れた。

 

3人の中で、最もグッドエンディングという概念に近い結末となった。

高潔に暴力を振るわなかった・・・と言いたいところだが、実際は、暴力を振るうのは効率的ではないという打算があった。

養豚場から逃げ出した害獣ではなく、心ある人間として扱って貰わねば、生きてはいけない。

人間に罪の意識を与え、過ちを償わさせるための戦いだった。

敗れても人間の心に毒を残せるだろうという、暗い気持ちもあった。

 

結果として報われたわけだが、たとえ報われなくても満足できただろうな、と思えるルートだった。

マーカスは、それほどまでに自由に生きることが許された存在だった。


カーラ

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ただ生きていたルート。


カーラは苦境に生きる存在だ。

圧倒的に不利な状況で、尊厳と命を守らなければならない。
銃を手にしたカーラは、娘アリスに暴行を加える父親トッドに銃を向ける。
威嚇のためだ。

こうするほど苦しんできたのだと、トッドに伝えるための行動だ。
しかし、それは『ただの故障』と受け取られてしまう。
銃の取り合いになったカーラとトッド。

カーラは戦いの末、トッドを撃ち殺す。

 

もっと平和的にいこうと思っていたのだが、説得が通じなかった瞬間、ノータイムで銃を取りに行ってしまった。

撃つつもりは本当になかったのだが、もみ合っている最中、ガラスに頭をぶつけられた時にためらいは消えていた。

 

逃げ出したカーラたちは孤独な存在だった。
誰も守ってはくれないのだ。
たくさん物があるコンビニ、雨をしのげるホテル、そして人々。
街にはすべてがあるが、すべてがカーラたちを助けてくれない。
盗みも犯罪も危険と考え、カーラとアリスは廃屋で一晩を過ごす。
その後も極力目立たず、ただアリスの望みだけには応えて逃げていく。
しだいに、一人の仲間が加わる。

「アリスがカーラを守る姿に心打たれた」と語るルーサーというアンドロイドだ。

カーラたちは、遊園地で過ごすという安らいだ一時を経て、家族となって国外を目指す。


クライマックス。

アリスがアンドロイドであるという事実に(プレイヤーが)意外とショックを受ける。
しかし、そうであるのならば、アリスは自ら望んでカーラについていき、子供としてふるまっていた事になる。
アリスという人間の子供を守ることで、カーラはアイデンティティを保ってきた。
もし、アリスがもっと早い段階で「私はアンドロイド」とカーラにうち明けていたら・・・、
カーラは過度のストレスによって自己破壊してしまっていたかもしれない。
(アンドロイドは、過度のストレスがかかったとき、自らシャットダウンして自殺する)
お互いがお互いを必要とし、お互いに相手の願いを受け入れた。

すべて分かったうえで、共に過ごしてきてくれたのだ。

なんて愛おしいのだろう。


アンドロイドと同じく、モノ扱いされたことのある黒人ローズと息子アダム。

ローズたちの協力してもらい、とうとう国外へのボートに乗る。
「ずっとアンドロイドを助けるおふくろはおかしいと思ってた。
でも、マーカスの言葉を聞いて気付いたんだよ。
生きているんだな。」
アダムたちとの別れを惜しみつつも、新天地へと向かう。
「自由のある新しい生活だ。何をしたい?カーラ」
ルーサーたちと未来について楽しく語らった矢先、監視船に見つかってしまう。
問答無用に射殺されるアンドロイドたち。

次は自分たち・・・というところで、選択を迫られた。
・ルーサーを盾にする
・アリスを庇う
・水中に飛び込む(部品が凍る温度)
・加速する
選んだのは加速だった。みんなで生き残らなければ。
しかし、すれ違いざまの銃撃をかわすことはできず、ルーサーは死に、アリスも瀕死の重傷を負う。
操作ミスでルーサーの死体を湖に落とす、ありえない行為をやらかす。
浸水していくボートを泳いで押していく。

対岸と機能停止、どちらが早いのか・・・。

 

対岸へとたどり着いた。
しかし、既にアリスに助かる余地はない。
お互いの心を伝えあったあと、アリスは死んでいった。
残されたカーラは生き続けるか、命を絶つか、選択を迫られる。
なぜルーサーとアリスは自分と一緒にいてくれたのか?
アリスの死体を残し、カーラは新天地へと進んでいく。

 

生きるのに必死だったので、極端に驕っていたわけではない。

それでも守ってやっているという感覚があるルートだったが、実際には守られた形となった。

カーラは、すべての望みが潰えても、自己破壊しなかった。

絶望しかないようなエンディングだが、しかしカーラはこの後も自分を大切に生きていくのだろう。

それほどまでに、彼女はルーサーとアリスに愛されたのだ。

 

~まとめ~

みんな生きていただけなんだよな・・・。